面白いことは良い。知らないことは良くない。

こちらはプライベート向け。

謎キャン2014 『IN THE DARK』~コンセプト編~

もう時期を外した感もありますが、、、

謎キャン2014にて、WALとして公演を行いました。

タイトルは『IN THE DARK』。

文字通り、完全な暗闇の中の中で行われる謎解き公演です。

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少し時間ができたので、折角ですし少し振り返っておこうと思います。

このエントリはコンセプト編と題して、少し固めに、今回の公演で何がやりたかったのかなどの背景にある考えを紹介できたらと思います。

 

今回の『IN THE DARK』は完全な暗闇の中で、4人が協力をして、謎を解きクリアを目指すという謎解き公演でした。

完全な暗闇というのは、初めからそれを実現したいという風に考えていたわけではなく、ミッションステートメントからコンセプトを考える段階で思いついたものです。

(ミッションステートメントとか謎解き公演のコンセプトってなんだろう?

という人は、同じく謎キャンで発行した同人誌『リアル謎解きゲームのこれから』を読んでね!という宣伝を入れてみる。)

 

謎キャンの公演では、

 

「今までの謎解きイベントのデファクトスタンダードを使わない能動的な物語体験」

 

というコンセプトを一度やってみたいのだけど?という所から話が始まりました。

自分は別に沢山の公演に言っているわけでも、謎解きイベントで生活しているわけでもないので、色々知らない部分も多いと思いますが、それでも自分の観測範囲内では、謎解きイベントというものに共通項があると感じています。

それがいい悪いというわけではなく、謎キャンではそのような共通項から外れてみたものがやってみたいと思っていたのです。

 

そのような事を考えていた時に、謎キャンで使用する事ができる会場の一覧が回ってきました。

その中に「黒い牢屋」という、どう考えても雰囲気バツグンの場所があったわけです。

 

時を同じくして、以前から名前は知っていて参加したいと思っていたダイアログ・イン・ザ・ダーク(DiD)というエンターテイメントに参加していました。

DiDとは、その場で初めてあった人と一緒に、アテンドと呼ばれる視覚障害者のガイドについて、完全な暗闇での活動を体験するという内容です。DiDは自分にとても多くの事に気づかせてくれました。

目が見えないということがどれだけ不安かということだけではなく、見えない中での生活がそこには確かに存在しているということ。人はどんな状況にも慣れていくということ、そしてそこでは確かなコミュニケーションが生まれるということ。

やはり、見るだけ聞くだけじゃなくて、体験をする事がどれだけ大事かということにももちろん気付かされました。

 

話を謎キャンに戻しましょう。

このような経緯があって謎キャンでは、黒い牢屋で、完全暗闇という状況と、自分がこれまでやってきた謎解きという体験を合わせてみたいと考えるようになったのです。

 

謎解きのデファクトスタンダードと言われると、ある程度経験がある方なら色々イメージが出てくるかと思います。

その全てを外すとなると、それはもはや完全に新しい何かを生み出すという途方のないものになるでしょう。

いつかはそのような事もやってみたいですが、今回は一つだけ、今までの謎解きで多く使われる要素を使わないようにしようと考えました。

それは、「紙とペンを利用しない」という事です。

謎を解くというとどうしても頭を利用することになるため、情報や思考の整理を行いために、メモを取ることが多いと思います。自分もパズルを解いたりすることは好きですし、論理パズルが一番解きやすいとは思っています。

ですが、体験型エンタテインメントにおいて、物語の登場人物となるという没入感覚を演出することがひとつの要素とするなら、紙とペンに向かっているだけでは少々味気ない。そのような考えのもと、紙もペンも一切使わない事を条件にしてみたのです。

しかも、暗闇ならば視覚が使えないため、そもそも文字とかメモとか使用できないという点が親和性が高いとも思えたのです。

 

もう一つ、今回の『IN THE DARK』では、デファクトスタンダードから外れてみたいと考えていた事があります。

それは、明確なストーリーラインを公演側からは提供しないという事です。

ストーリーとは、物語体験の骨格ともなるものです。しかし、それをあえて明確に作りませんでした。

そうすることで、有り体な言葉ですが、参加者自体の行動が物語を形作ることを目指したのです。暗闇という体験自体がかなりインパクトのあるものなので、そこにこちらからストーリーを付与することが競合関係を起こすのではないか?という点もありました。暗闇での活動という体験自体を大事にしたいという風に考えたのです。

 

(今、これを書いていて思ったのですが、そのような、ストーリーをどの程度謎解きイベントに組み込むかという点は、非日常体験が日常のなかでどのような位置づけになるかという事を決めているかもしれませんね。あまりにストーリーが強ければ、その体験を日常の延長と捉えることは難しいかもしれないという意味合いです。)

 

なので『IN THE DARK』においては、初めは暗闇に理由、ストーリーをつけようとして、日蝕がテーマとして採用されそうになった時期もありました。タイトルもポスターも実際に作ったりしています。しかし、上記のような事が考えられた結果、日蝕テーマはお蔵入りとなりました。

 

これらの流れを経て、今回の公演では、参加者自体が『IN THE DARK』という場で体験する出来事から、自分だけの物語を作り上げる、という事がコンセプトの中に組み込まれることになりました。

それが実現できたかどうかは参加者のみが知るという所ですが、やはり自分もそして団体も未熟だったので、コンセプトの全てを参加者に伝えることはまだまだできなかったのかなと思います。

 

そんな中、今回の公演では、謎キャンというイベント内の公演であることや、そもそも紙とペンを利用しないなどの条件が重なりアンケートを取ることができませんでした。それ故にいつも以上にTwitterなどでの感想を調べてチェックしました。

かなり挑戦的な内容であるという事は自覚していたので、もしかしたら受け入れられない、伝えきれないのではないかという想像がある中で、

そこには、「面白かった」、「驚いた」などの好意的な感想がたくさんありました。

そのような感想を見たときは、とにかく安心したというのがその時の正直な気持ちです。

もちろん、このような感想は基本的に肯定的なものがおもてに出てきやすいという性質もあるとは思いますのですが、それでもただ嬉しかった。

 

感想の中には、「貴重な体験だった」という風に、WALの公演を一つの体験として捉えてもらえたものがありました。

そのような感想を見た時に、『IN THE DARK』が誰かの体験に、そしてその中で何かを感じ取る、”その人の物語”になっているのだなと、実感出来ました。

やりたいと、提供したいと、そう思っていた事が、本当に参加者に伝わっているのかもしれない。それがここまで嬉しいものなのかと、改めて感じたのです。

 

WALを立ち上げてよかった。自分たちの公演を行うことが出来てよかった。

本当にそう思うことができました。

 

公演に来ていただいた皆様、謎キャンスタッフの皆様、謎キャン実行委員長の新美さん、そして一緒に『IN THE DARK』を作り上げてくれた二人、この場を借りてお礼をいいます。

本当にありがとうございました。